【セレモニストインタビュー】ボディーワーカー 大中咲子さん
~「2時間泣かせてほしい」という渇望は、なぜ消えたのか。男性との分断を越え、優しい世界へ繋がり直すまで~
「大人のための初潮のセレモニー」。その言葉を聞いて、ピンとくる人はまだ少ないかもしれません。けれど、その場に立ち会った女性たちの多くは、自分でも思いがけないほどの深い癒やしを体験し、日常へと帰っていきます。
今回お話を伺ったのは、神奈川県藤野でボディワーカーとして活動しながら、現在は「セレモニスト」として仲間とともにこの活動を広げている、大中咲子さん。
「生理にはポジティブだった私に、なぜこの場所が必要だったのか」。
彼女が半年間のトレーニングを経て手にしたのは、忘れていた「内なる少女」との再会と、長年抱えてきた「男性との分断」の終わりでした。
(聴き手:河野まさし)
オンラインの「広さ」から、藤野の「手触り」のある暮らしへ
ーー咲子さん、今日はよろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介からお願いできますか?
咲子: よろしくお願いします。私は今、神奈川県の藤野という場所で個人セッションのスペースを持って、ボディワークの仕事をしています。体のしんどさを抱えている方はもちろん、内面のしんどさが体に現れているような方とも、日々向き合っています。
ボディワーク中の咲子さん
あとは、この藤野という土地での暮らしも私には欠かせないものです。以前はオンラインでの活動に力を入れていた時期もあったんですけど、今はもっと「手触りのある関係」を大事にしています。誰が何をしていて、何に困っているかがわかる大家族のようなコミュニティの中で、顔の見える人たちの役に立ちたい。そんな想いで日々を過ごしています。
最初のセレモニーで起きたこと:忘れていた「あの子」の震え
ーーそんな咲子さんが「大人のための初潮のセレモニー」に出会ったわけですが、「セレモニー」の存在を聞いたとき、どう思われましたか?
咲子: 正直、最初は「ほんまに私に必要なん?」と思ってました(笑)。私はもともと体のことを勉強して実践もしてきたから、生理がいかに体を整えるものか理解していたし、生理に対してネガティブな思いも全然なかったんです。でも、友人のゆみこちゃんがあまりに熱く語るから、「それなら行ってみようかな」くらいの気持ちで参加したんです。
実際、行ってみるまでは何が行われるかさっぱりわからなかった。でも、当日まず進行役のRokoちゃんがセレモニーでお祝いされる姿を見て、衝撃を受けました。「あぁ、そういうことか」って一気に腑に落ちたんです。
ーー実際に咲子さん自身が初潮を祝い直しされる経験は、どんなものでしたか?
咲子: 自分でも驚くような体験でした。私、自分が「初潮の頃の少女」のことを、完全に忘れてしまっていたことに気づいたんです。セレモニーの中でその頃の自分に繋がった時、あの子が当時、どれほど不安の中にいたのか、そしてその不安を口にすることさえできずに、ただ一人でやり過ごしていたのか……。
初潮の頃の自分が、どんな不安と孤独の中にいたのか――そのことを、私はすっかり忘れていたんです。
あんなに不安で孤独だった自分を、数十年経ってようやく見つけて、抱きしめてあげられたような感覚でした。私にとってインナーチャイルドの癒やしはそんなに必要ないと思っていたけれど、実はあの子はずっと待っていたんやなって。
初めてのセレモニーでお祝いされる咲子さん
それと同時に印象的だったのが、男性たちの存在です。あの場には、ただ女性を祝うためだけに集まってくれた地域の男性たちがいましたよね。自分のために祝われるんじゃなく、ただ私たちの存在をホールドし、祝福してくれる男性ホルダーの方々。「安全な場で、リアルな男性たちが『私がほんまに望んでいた扱われ方』をしてくれたことが、男性を見る目を変え始めた」。あの温かな器に守られた体験が、癒やしの大きな一歩になりました。
「静かな革命」を意図し、セレモニスト・トレーニングに参加
ーーそこから、初潮のセレモニーを開催できるようになる、セレモニストを目指すトレーニング(TBAC※)に進まれました。その理由を教えていただけますか?
※TBAC=To Be a ceremonistの略。初潮のセレモニーを開催できるようになる約半年間のプログラム。
咲子: セレモニーで体験したことが、私の中で「個人的な癒やし」以上の意味を持ったからです。私はこれまでジェンダーの問題や男女の不仲に心を痛めてきたんですが、社会でそれを扱おうとすると、どうしても「男性バッシング」になりがちで。でも、このセレモニーは誰も罰しない。誰かを非難することなく、男も女も幸せな感覚を深く広く持っていける。
これは個人の癒やしで終わらせたらあかん、社会のあり方そのものに関わる誰も傷つけない『静かな革命』や。この革命の一部に私も関わりたい。
そう強く思ったのが、トレーニングを受けようと決めた理由です。
ーー実際に半年間のトレーニング(TBAC)を受けてみて、印象に残っていることはありますか?
咲子: まず、驚くほどゆっくりしたペースだったことですね(笑)。これまで私が受けてきたオンライン講座は、情報をガンガン頭に詰め込む系が多くて、正直しんどかったんです。でもTBACは違った。「教え込まれるのではなく、『受け取れるペース』で場が保たれていたことが、安心を育ててくれた」と感じます。
1回目の講座なんて、皆んなの想いのシェアだけで終わりましたもんね。でも、それが一番大事なことやった。オンラインであっても、これほどまでに「感じる」やり取りができるんやという信頼が、Rokoちゃんとまさしさん、そして仲間との間に育っていきました。
オンラインで仲間とともに学ぶ様子
合宿も大きかったですね。オンラインで知り合ったはずの仲間なのに、リアルで会った時の安心感と「仲間やな」という感覚。毎回変わるバディ・システムも、お互いを深く知り合う助けになりました。その一つひとつのプロセスが、私の中の「安全な場」の定義を書き換えていったように思います。
セレモニストトレーニング合宿での食事の様子。
「それ、嫌!」――内なる少女が教えてくれる本質
ーートレーニングを経て、内なる少女との付き合いが日常になったとお聞きしました。具体的にはどのような変化があったのでしょうか?
咲子: これが私にとって、ものすごく大きな変化やったんです。日々の暮らしの中で、「何かをやらなきゃいけない」とか「こうあるべき」って左脳で考えすぎてしまうこと、誰にでもあるじゃないですか。そういう時、私の中にいるあの「少女」が登場してくれるようになったんです。
あの子の声って、ほんまにまっすぐで、忖度がないんですよ。私が迷っている時に、「内なる少女の声を聴くと、『それは違う』『それは嫌!』という本質が、驚くほどはっきり分かるようになった」んです。
セレモニストトレーニング合宿でお祝いされる咲子さん
ーー少女の声が、今の咲子さんの羅針盤になっているんですね。
咲子: そうなんです。大人の私はついつい理屈で正当化しようとするけれど、彼女は一刀両断(笑)。「それ、嫌!」ってバッサリ言ってくれる。彼女の声に従うようになると、不思議と迷いがなくなるし、自分の命の声にちゃんとつながれている感覚があるんです。
家系的にも左脳派の家で育ったので、自分の中で常に理屈と直感が攻め合っていたんですけど、あの子の声を受け入れることで、自分の感性を信頼できるようになりました。この感覚があるだけで、毎日の安心感が全然違いますね。
「2時間泣かせてほしい」という欲求が消えた日
ーー男性に対する感覚についても、大きな変化があったそうですね。
咲子: はい。実はこれ、今回のインタビューの最中にふと気づいて自分でも驚いたことなんです。以前の私は、男性から傷つけられてきたという感覚がどこかにあって、「いつか誰か男性に、私の傷を全て受け止めてもらって、その人の前で2時間ワンワン泣きたい。そうすることでやっとこの傷は癒やされるんちゃうか。」って何年もずっと思っていたんです。
でも、セレモニーに出会って、2回目のセレモニーにも参加して、トレーニングを終えて……。今ふと振り返ってみたら、「かつて『誰かに2時間泣いて受け止めてほしい』と思っていた欲求が、いつの間にか消えていた」ことに気づきました。もう、そんなことをしなくても私は大丈夫なんや、って。
ーーその渇望が、いつの間にか癒やされていたんですね。
咲子: セレモニーで出会った男性サポーターの方々、トレーニング中にもホールドしてくれたサポーターの男性。そしてまさしさんが、男性の加害の歴史について「それは本当に残念なことで、変えていかなければならない大きなことなんです」と、一人の男性としてまっすぐに伝えてくれたこと。
セレモニストトレーニングでの集合写真。
そんな一つひとつの関わりが積み重なって、私の乾いていた場所に染み込んでいったんやと思います。無理に許そうとしたわけじゃなく、自然と「男性やったら、そう思っちゃうよね」って思えるくらいマイルドになれた。叩きたい相手がいなくなったというのは、私自身にとってもすごく楽なことでした。
セレモニーは「余韻」から本当の始まりへ
ーー咲子さんはすでに、ご自身でもセレモニーを主催されました。やってみていかがでしたか?
咲子: はい。自宅で少人数で開催したんですけど、参加した3人はお互いに初対面だったのに、最後には少女に戻ったような穏やかで眩しい雰囲気になって、たくさんの涙と笑顔が溢れる、ほんまに素晴らしい場になりました。
咲子さんが主催したセレモニーの記念写真
ただ、主催してみて感じたのは、「セレモニーは終わっても、余韻をどう日常に残すかが本当の始まりやと感じた」ということです。
忙しい毎日に帰った時に、あの感覚をどう忘れないでいられるか。だから私は1ヶ月後に振り返りシートを送るなど、その後のフォローも大切にしています。
これから先は、自分の娘や、その友達とか、リアルな初潮を迎える子たちのセレモニーもやっていきたいなと思っています。お母さんたちも含めて、一緒に癒やされていくような場を作っていきたいですね。
新しい男女関係を作っていく、長老のようなリーダー
ーー咲子さんにとって、「セレモニスト」という役割はどんなものでしょう?
咲子: セレモニストの役割は、新しい男女関係を地球に作っていく、先駆者であり、静かなリーダーだと思っています。旗を振って先導するんじゃなくて、立ち上がれない一人ひとりの背中をさすって、「大丈夫だよ。辛かったね。一緒に歩いていこう」って寄り添うような。おばあちゃんの長老みたいなイメージですね(笑)。
幸せって、何かを手に入れることじゃなくて、自分が優しい気持ちでいられることだと思うんです。「お互い傷を持ちながらでも、男も女も優しい気持ちで繋がり直せる世界を、私はあきらめたくない」。たとえ傷があったとしても、相手を思いやり、支え合える。セレモニーが、そのための確かな一歩になると信じています。
ーー最後に、この記事を読んでくださっている方へメッセージをお願いします。
咲子: 私も最初は「私には必要ない」と思っていました。でも、一歩踏み出してみたら、忘れていた自分に出会い、世界との関わり方が変わりました。自分が優しい気持ちでいられるようになると、本当に世界の見え方が変わります。もしこの記事を読んで少しでも心が動いたなら、その直感に耳を傾けてみてください。その優しい一歩を、私たちはいつでも待っています。
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